夫婦で『人生フルーツ』を観てきました。ようやくというか、やっとこさというか。映画の公開は2016年で、ちょうどぼくらが『心地よさのありか』を制作していた頃。書籍デザインをしてくれた漆原さんがこの映画を観て絶賛していて、ずーっと気になっていました。
よくある素敵な老夫婦のほっこりしたドキュメンタリーだと思っていたら、気持ちよく裏切られました。ほっこりとは真逆の反骨のカタマリ、程よい緊張感とリスペクトに満ちた夫婦のやりとりにニンマリです。
津端修一さんと英子さんが暮らしたのは、愛知県春日井市にある高蔵寺ニュータウンの平屋。実はぼく、高蔵寺ニュータウンにある高蔵寺高校に通っていました。名古屋の実家から川を渡り、山の上にある高校まで、雨の日も風の日も、3年間毎朝自転車で坂道を駆け登っていたのです。帰りは坂を下るだけなので、あっという間に家に帰ることができました。ぼくが高校生の時も、津端夫妻は高蔵寺に住んでいて(当時はまったく知りませんでした)、同級生にはニュータウンから通ってくる子もたくさんいました。
英子さんが栄のデパートに行くときに登場する高蔵寺駅は、ぼくが帰省する際の最寄り駅で、お盆と正月は奥さんも娘もこの駅を利用しています。実家の2階の窓からは、遠く山の上に連なるニュータウンがいつだって見えていて、よくボーッと眺めていました。実家はすでに手放してしまい、記憶の中だけにある風景です。
高校時代の忘れかけていた思い出に胸が熱くなり、『人生フルーツ』は特別な映画になりました。元々、東海テレビのドキュメンタリーとして、TV放送された作品で、最近奥さんのVoicyリスナーさんたちの間で、この映画が「旅する人生フルーツ」として大いに盛り上がっているのは、偶然ではない気がしています。
8年前の夕方に母から連絡があり、急いで新幹線に飛び乗って病院に駆けつけた駅も高蔵寺でした。今日は父の8回目の命日。もし生きていたら「これ、面白いから観てみるか?」と、録画したDVDを真っ先に送ってくれたに違いありません。
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