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  • 執筆者の写真Nao Ogawa

飛べる読書

更新日:2020年7月26日


わたしが最近手にしている本は自分でも笑ってしまうくらいにわかりやすくて、

庭の本と中学受験の本を教科書的に読むのと並行して、

娘の受験の伴走をする生活のしんどさからつかの間逃げるように

現実とはかけ離れた世界に飛べるような本が読みたくてしかたないのです。 春の自粛中、友人がSNSのブックカバーチャレンジに挙げているのを見て思い出した『本格小説』は

今から10年以上前、娘がまだ1歳になるかならないかのころ、

まさに彼女が「ものすごく面白いから読んで!」と興奮気味に貸してくれた本でした。

しかし当時のわたしは読書時間というものがほとんど持てなかった、

持てたとしても長編小説を読める状態ではなかったため、

ろくにページをめくることもできずに数週間経ってしまい、

そのまま友人に返したという苦い思い出があります。

でも今なら読めるのかも!とふと思い、図書館で借りてみたところ

期待以上の圧倒的なおもしろさにどっぷりはまり、久しぶりに寝不足になるほどでした。

そのうち再読したくなる気がするので、そのときは文庫版を買おうと思います。

作品の余韻に浸るなかで、著者の水村美苗さんのデビュー作『続明暗』も読んでみたくなり、

でもそのためには大学の近代文学の授業でも読んだ『明暗』をまず読み返さねば、 たしかあれはまだ実家の本棚にあったはず……と考えていたら

なんだかうずうずと漱石が読みたくなってきて、とりあえず『草枕』をめくることにしたり。 きっと、少し古めかしくも品のある日本語の文章や舞台設定が

今の自分の生活とはまったく違う世界で、だからこそページをめくった瞬間に美しい映画がはじまるような、

そんな「飛べる読書」を今は求めているのかもしれません。

4畳半の部屋で、夜まで娘と肩を並べて勉強をした後、

「あぁ、今日もよくがんばった」と自分たちを労いながら寝室へ行き、

ベッドの上でほんの10分程度でも本をめくる。

その時間がわたしにとっても娘にとってもささやかごほうびであり、

翌日への活力にもなっている、そんな日々です。

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